僕の高校時代からの友人で世界中を旅しているムッチーという男がいる。
この男、まさに「生きる伝説」だと言っても過言ではない。
高校時代に出会ってから間もなく20年近くが経つが、それまでに一体どれだけの爆笑エピソードを僕に提供してくれたことか。
勘違いして欲しくないのは、彼自身が面白いことを言うわけではない。
むしろたまに面白いことを言おうとするが、それは全く面白くない。
彼は"生き方そのもの"が面白いのだ!
そんなムッチーの波瀾万丈に満ちた半生を紹介させていただきたい。
第一話「恐怖の打率!殴られ界のイチロー誕生」
僕たちは彼のことを"尊敬の意"と"ただの皮肉"を込めて「世界のムチロー」と名付けた。
なぜそう名付けたのか?
答えはたった一つ。
『ただ街を歩いてるだけなのに、見知らぬ人にボコボコにされる』からだ!
もちろん毎回ではない。だが、その打率の高さたるや。
もしも「人から喧嘩売られる」という職業があったなら、彼は確実にイチロークラスのLEGENDになっていただろう。
本人曰く、「生まれてきた時代が悪かった」と。
安心してください。そんな時代、ありませんよ。
これまでも、そしてこれからも。
そんな職業が今後一切この地球上で新登場することはありませんので、時代のせいじゃありません。
それにしても、本当に全盛期のムッチーは神懸っていた。
イチローがみせる「そんな球をヒットできるか普通!?」という素晴らしい打撃。
あれと同じくらいの素晴らしい打撃をムッチーはいとも簡単に再現するんです。
『そんな場所でボコボコされるか普通!?』って。
ある春の日、二の丸公園で気の合う仲間と和気あいあい花見をしていた時もそうだ。
ムッチーがニコニコしながら楽しそうにトイレに行ったっきり帰ってこない。
酔いつぶれたんじゃないかと心配して様子を見に行くと、そこには10人くらいの"アッチの本職"の方々からボッコボコにされている真っ最中のムッチーがいた。
公衆トイレで10人にフルボッコ。
ヤンキー映画の撮影なんかなーと思って大声で「カット!」て叫んだもん。
そしたら殴りつかれた怖いお兄様方はゾロゾロと退散し、そこには血まみれで横たわる「主演俳優・ムチロー」がいた。
EXILEばりの大根役者の彼にしては、まずまずの苦しみようだ。
多分本当に苦しいんだろうね。
てか一体どうしてそんなことになったのか?
どうしてそんなボコボコにされたのか?
その答えはたった一つ。
そんなの全くわかりません!!
知るか!俺に聞くな!本人に聞け!
ということで本人に直撃!
すると本人曰く、
『まったく覚えてない』
犯罪者がする言い訳ランキング第一位じゃねーか!
これまでも、そしてこれからも!
永遠の第一位の言い訳じゃねーかよ。
なんか絶対お前に原因があんだろーなー。
まーでも肩書き上は、原因不明の難病です。
なぜ殴られるのかわからないんですから。
しいていうなら相手に動物的な攻撃反応が働くんじゃないかと。
不快なオーラを放ってるんじゃないかと。
だって下通りを歩けばピーターアーツみたいな人に吹っ飛ばされる。
クラブに行けばジェロム・レ・バンナみたいな人にぶっ飛ばされる。
ちょっと路地裏に行けばオカマに襲われる。
週末遊びに出かけたら月曜日はこんな顔になって帰ってくる。
腫らした顔を見るたびに僕は悲しい気持ちになったなー。
なんでコイツはこんなにツイてないんだと。
思い返せば高校時代からもそうだったんだよ。 【続く】